社外に活路を見出した配属1年目 〜孤独と配属ガチャの現実〜

私の回顧録

新入社員として社会に出たばかりの頃、私は職場での人間関係に壁を感じていた。今思うとASD・ADHD傾向を持つ私にとって、「職場に馴染む」ということが思いのほか難しかったのである。だがその経験が、今の自分を形づくる重要なきっかけになったとも思っている。

①優秀な同期に囲まれた研修期間

私が入社したのは、いわゆる就職氷河期の終盤であった。新入社員研修は約3か月にわたり、その間、私はなんとか同期と馴染もうと努力していたつもりであった。

同期は皆、非常に優秀だった。旧帝大、早慶上智、東工大、一橋など難関大学の出身者も多く、英語がネイティブ並みに話せる者もいた。地方の電力会社にこれほどの人材が集まってくること自体、当時の就職事情を物語っていたと思う。

一方で、私はASDやADHDの傾向からか、輪の中に自然に入っていくことが難しく、研修中もどこか孤立感を覚える場面が多かった。

②希望しなかった三交代勤務への配属

研修を終え、いよいよ本配属が決まった。私が配属されたのは、発電所の三交代勤務の部署であった。正直、希望していなかった部署であり、特に夜勤がある点が気になっていた。

とはいえ、当時は「配属先が希望と違うから辞める」という考えは一般的ではなかった。むしろ「定年までこの会社で働くのが当たり前」という意識が社会に浸透していた時代である。

三交代勤務には「濃い人間関係が築ける」「班員は家族のようになる」「夜勤手当が高い」などのポジティブな面も語られていた。実際、同期の中にはこの勤務を希望する者もいた。

③静かすぎる班と歓迎会のない日々

しかし、私が配属された班は、事前の期待とは大きく異なるものであった。とても静かで大人しい班であり、一般的に行われる歓迎会すら開かれなかった。
他の同期が楽しそうに歓迎会の話をする中、私は羨ましさと寂しさを感じていた。

同じ班の先輩たちは、仕事以外ではほとんど話しかけてくることがなかった。一部の先輩が必要最低限の業務を教えてくれるのみで、私の存在は半ば放置状態であった。

④わからないことすら、わからない

大学では化学を専攻していたため、発電所や機械のことはまったくの未経験であった。何をどう質問して良いかも分からず、聞かなければ誰も教えてくれない。ルーチン業務を覚えるだけで精一杯の日々であった。

「家族のような関係」とは程遠く、職場に行って帰るだけの毎日が続いた。同僚と飲みに行く、食事に行く、休日に遊びに行くといったことは一切なかった。

⑤同期とも、旧友とも疎遠に

三交代勤務は時間が不規則であるため、同期と予定を合わせるのも困難だった。結果として同期とも疎遠になり、疎外感はさらに深まった。大学時代の友人たちとも時間が合わず、ますます孤立感が増していった。

「ただ仕事をして給与をもらうだけ」の生活。まるで会社に飼われているかのような気分であった。20代の私には、この孤独と取り残された感覚が非常に辛かった。

⑥打開策は「社外のつながり」にあった

この閉塞感から抜け出すため、私は社外に目を向けることにした。きっかけは、大学時代の友人の紹介であった。その友人の友人は家電量販店で営業職をしており、夜勤はなかったが土日出勤・平日休みという点で、私と勤務時間が近かった。

その人物とは飲みに行ったり遊びに行ったりと、私にとってかけがえのない時間を共に過ごすことができた。今では会う機会は減ってしまったが、当時の支えには本当に感謝している。

また、この経験を通じて、職場以外のつながりを持つことの大切さ、そしてその作り方を学ぶことができた。

⑦配属ガチャと「もしも」の想像

配属から1年が経った頃、私の班に人事異動で移動してきた、ある先輩社員にこう言われた。

「金太郎さん、新入社員であの班はハズレだよ~。新人の一番大事な時期に先輩メンバーに恵まれなさすぎだね。」

環境のせいにはしたくはないが、まさに「配属ガチャ」のハズレを引いたのである。

もし、もっと面倒見の良い先輩や活発な班に配属されていれば、私の会社員人生は違ったものになっていたのかもしれない。あるいは、私に空気を読む力や調整力(ASDやADHD傾向がなければ)があれば、ハズレの班でもうまく立ち回れたかもしれない――そんな風にも思ってしまう。

⑧社外のつながりがもたらしたもの

それでも、あの環境だったからこそ、私は社外・職場外に目を向けることができた。今では、プライベートでの人間関係のほとんどが社外にある。

もし、あの時「当たり」とされる班に配属されていたら、私は会社の中だけで完結する人間になっていたかもしれない。そう思うと、あの孤独と向き合った経験も、私にとっては無駄ではなかったと感じている。

おわりに

「社外に活路を見出す」。それは、一見ネガティブな状況から逃げ出すための消極的な選択に見えるかもしれない。しかし、それが人生を前向きに変えてくれる大きな一歩になることもある。孤独だった新人時代の私が、今こうして前を向いているのは、あの時の「配属ハズレ」のおかげかもしれない。

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