ETCカードを作るのに半年かかった話
ある日、職場の上司から「ETCカードを作っておいて」と言われた。普通の人なら「そんなの1か月もあればできるだろう」と思うだろう。しかし、私の場合はそうではなく、現実は想像以上に厄介だった。私の職場では、こうした事務手続きでも非常に多くの確認が必要であり、関係者も多岐にわたる。そして何よりも、前例に異様なまでにこだわる文化がある。
その結果、私はこのETCカードを作るのに、実に半年近くもかかってしまったのである。
手続きには“前例”が絶対条件
私の職場では、どんなに些細な業務でも、必ずと言っていいほど「前例」が求められる。ETCカードの作成もその例にもれず、実に細かい確認事項がたくさんあった。
- 支払い方法(請求書払いかクレジット決済か)
- 申請者名義と印鑑の種類(部長印か社長印か)
- 稟議の決裁権者(部長か役員か)
これら以外にも、「申請様式の書き方」、「誰の名義にするのか」、「カード記載名は個人か課名か」など、事細かにチェックされる。
何より厄介なのは、「確認しながら進める」という柔軟な手法が認められないことだ。すべての情報を完璧に揃えて、はじめて動き出すことが許される。つまり、事前確認が完了しない限り、なかなか前に進めないのである。
情報収集に奔走する日々
私は過去にETCカードを作成した可能性のある部署に連絡を取り、どういった流れで申請したのかを確認した。だが、予想通り参考になる情報はほとんど得られなかった。「かなり前に作成したため、資料が無い」「当時の担当者はすでに異動している」といった返答ばかりで、思うような前例を見つけ出すことができなかった。
ようやく見つかった過去の稟議資料も、ごく一部の記録しか残っておらず、手続きの全体像をつかむには不十分だった。
納得しない上長、突き返される資料
部分的な情報から手続きの方法を私なりに整理し、上司に相談したが、「確認不足」「情報が不十分」「不明な部分が多すぎ」として何度も突き返された。
私は「まずは申し込んでみて、不備があれば訂正すれば良いのでは」と提案したが、それは許されなかった。結局、この社内のやり取りだけで3か月以上が過ぎていたのである。
完了しても評価されない徒労感
最終的に何とかETCカードを作成することができたが、達成感は皆無であった。
部内からの感謝の言葉もなく、むしろ「時間かかりすぎたね」という冷ややかな反応であった。
確かに半年近くもかかったのは事実だ。できる人がやれば1か月程度で作成できたのかもしれない。
しかし、私は徹底した前例主義と、一切の不備がない手続きが求められることに、うんざりしてしまった。
ダメリーマンとしての実感
今回の一件で、「やはり自分はダメリーマンなのだ」と実感した。たかがETCカードの作成に、半年も要してしまったからだ。
正直、今後はこうした仕事は引き受けたくない。社内調整や資料収集が得意な人に任せた方が、よほど効率的だと思う。そのような人の方が私より社内の伝手も豊富なはずだ。
特に筆頭課や庶務といった部署は、このような過去の事例を探し出す業務が多数ある。だが、私のような不器用な社員にとっては、前例探しと資料づくりの繰り返しは、精神的に消耗するばかりであった。
庶務ばかりではなく、少しでも自分の専門や得意が活かせる業務を担当できる人は羨ましいと改めて思った。
「たかがETCカードに半年」。組織の非効率さと、自分の無力さが染みついている。本当に、うんざりした体験であった。
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