40代に入ると、会社員としての将来がある程度見えてしまう。特に私のようにASDやADHDの傾向がある人間にとっては、昇進や希望部署への異動が望めない。そのような中、定年まで勤め上げることを考えると非常に憂鬱な気分になる。
私は現在、47歳であるが、定年の60歳まではまだ13年もある。この間、ほとんど変わり映えしない生活が続くと思うと、「このままで良いのか。もっと自由な生き方を追求すべきではないか」と考えてしまう。そして何気に流行している「FIRE」について試算してしまう。
完全FIREに必要な金額 ― 1億5千万円
FIREに必要な資産額は、家族構成や年金の受給年齢までの期間によって大きく左右されると思う。さらに年金支給開始年齢については、65歳から引き上げられる可能性も否めない。そのため、安全サイドで考えると1億5千万円という金額が一つの目安になると私は考えている。
生活費の前提
我が家は4人家族である。年間の生活費は400万円から500万円の範囲で収まっているが、多めに見積もって500万円とする。
老後までの生活費
年金を65歳から受け取れると仮定し、私と妻は約20年間(正確には18年だが厳しめに見積もる)を年金なしで暮らす必要がある。年間500万円なら20年で1億円となる。
子どもの教育費
子ども2人分の教育費をそれぞれ1000万円と見積もり、合計2000万円を追加で確保しておきたい。実際には生活費に含まれる部分も多いが、念のため別枠で計算した。
安全資産としての余裕
生活費、子どもの教育費を合計するとおよそ1億2千万円前後となるが、株価下落や医療費増など不測の事態を考慮し、余裕を持たせて1億5千万円が妥当と判断した。
資産運用による裏付け
資産をすべて現金で持つのは現実的ではない。仮に1億5千万円を全世界株式インデックス(オルカン)に投資し、年利5%で運用できれば年間750万円(税引き後600万円)の収益が得られる。生活費500万円は資産を切り崩さず賄うことも可能である。
また、安全面を見て、資産を「半分現金、半分オルカン」で運用したとしても、年間300万円程度の収益が見込めるので、生活費の半分以上をカバーできる。残りは現金の切り崩しで対応すればよく、リスクを分散させながら安定した暮らしが可能になる。
サイドFIREなら必要額は1億円
完全FIREを目指すには1億5千万円必要だが、サイドFIREであれば1億円程度でも現実的である。
例えば月10万円を副収入として得られれば年間120万円となり、生活費500万円から差し引くと、資産からは380万円を補えばよい。1億円のうち7500万円をオルカンで運用すれば、税引き後300万円の収益が期待できる。不足分80万円は現金から取り崩せば済む計算だ。
また、人は完全に働かなくなると生活リズムが崩れ、社会との関わりも希薄になりやすい。
そのため、適度に働くサイドFIREのほうが心身の健康には良く、最適解であると私は考えている。
ただし問題は「サイド」の内容である。せっかく会社員を辞めても、再び雇われる形には抵抗がある。かといって独立して事業を始めるのも容易ではない。「サイド」の部分をどう組み立てるかが今後の大きな課題になる。
FIREの実現性と課題
このように数字を置いて試算してみると、FIREの実現性が見えて来る。大まかな試算であり、少なくない金額ではあるが完全FIREなら1億5千万円、サイドFIREなら1億円が一つの目安であると考える。ただし、FIREは単に「資産があれば良い」という話だけではない。
実際に会社を辞める段階になると、資産以外に次のような問題が浮かび上がるだろう。
- 退職後の「サイド」の部分をどうするか
- 今の職場を辞めることについて家族や親戚にどう説明するか
- 日々の生活リズムや社会とのつながりをどう維持するか
特に家族や親戚への説明は厄介であると思う。親世代は定年まで勤めあげることを美徳としているので「働かないで何するのか?」と疑問を持たれる可能性は高い。せっかくFIREしても家族や親戚との関係がギクシャクしては元も子もない。
まとめ
私の試算では、完全FIREには1億5千万円、サイドFIREには1億円が目安であると考える。それなりの資産が必要となるが、生活費、年金受給までの期間など、数字に落とし込んでみることで、会社にしがみつかなくても良いタイミングが見えて来ると思う。
とはいえ、資産額を満たせばすぐにFIREができるわけでも無いと思う。退職後の生活の組み立て方や、家族や親戚への説明など考えなくてはならない課題もいくつかある。
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