最近は街中でも外国人を見かけることが多くなった。コンビニや飲食店でも働いているし、観光客も多い。とはいえ、「もし外国人に話しかけられたらどうしよう」と心配する人は少なくないと思う。英語に苦手意識を持つ人は、急に外国の人に話しかけられたら頭が真っ白になるかもしれない。
ただ、私の場合「外国人と話す方が気楽だ」と思うことがあるのだ。
私はASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如・多動症)、そして吃音の傾向を持っている。同じ日本人との会話では、「常識がない」と言われることもあるし、職場では「空気が読めない人」と見られていると感じる。人と違う行動や発言をすると、すぐに「変わった人」というレッテルを貼られ、場合によっては怒られたり仲間外れにされることもある。
しかし、外国人と接する場面では、このような「常識」や「空気を読む」という縛りが弱まる。文化や習慣が違うのだから、「この人はそういう国の人なんだ」と自然に受け止めてもらえる。そもそも「常識」とは国や地域で大きく異なるものだ。だから、私が多少空気を読まなくても「文化の違い」として受け入れられ、嫌な目で見られることは少ない。これは私にとって気楽に思える。
吃音も「英語が苦手」に見えるだけ
会話となると英語を使うことが多い。私は吃音があり、言葉が詰まることがある。日本人同士なら「話し方が変だ」とか「何でどもってるんだ」と思われるかもしれない。場合によっては話し方を真似されてバカにされることもある。だが、外国人と英語で話す場合は違う。
多少どもっても、相手は「英語が苦手なのかな」程度にしか思わない。実際、私が言葉に詰まっても「大丈夫、ゆっくりでいいよ」と笑顔で返してくれる人が多い。そして、吃音とは気づかれず単に「英語に慣れていないだけ」と受け止めてもらえるのは本当に気が楽だ。
仲良くなった外国人の友人には、自分が吃音であることを伝えたこともある。しかし、特に驚かれることもなく「そうなんだ」程度で受け入れてくれる。文化や言語の違いが前提にあるからか、細かいことを気にしないのだろう。彼らにとって大事なのは「伝わるかどうか」であり、多少言葉が不自由でも問題ないという感覚なのだと思う。
ちなみに英語で吃音は「stuttering」という。
海外での体験から感じたこと
実は私は学生時代に半年ほど中国で生活した経験がある。中国は人口も多く、人も多様だ。日本のように「空気を読め」という雰囲気はなく、良くも悪くも自分の主張をはっきり言う文化だった。並ばない、大声で話す、ごみを平気で捨てる、嘘をつく……そんなことも日常茶飯事だったが、不思議と人間関係での気疲れは少なかった。
日本にいるときは「人の目を気にする」ことが大きなストレスだった。しかし中国では、そもそもみんなが自分のペースで動いているので、周囲の目を気にしなくてもよかった。発達障害の傾向を持つ私にとって、周囲をさほど気にせず過ごせることは気楽でもあった。
当時は就職難でもあったので、もし今の会社に就職できなかったら、ワーキングホリデーで海外に行っていたかもしれないと本気で思う。それくらい、異文化の中にいる方が気楽に過ごせると感じた。
海外でこそ活躍できる可能性
もちろん、海外生活は良いことばかりではない。言葉の壁はあるし、文化の違いに戸惑うことも多い。特に仕事となれば、語学力や専門的なスキル、そして強い精神力も必要だろう。
しかし、ASDやADHD、吃音を持つ人が日本で求められる「空気を読む」「常識に従う」といった暗黙のルールから解放されるなら、それだけで動きやすくなると思う。もしかしたら日本にいるよりも活躍のチャンスが広がるかもしれない。
実際、発達障害がある人は独特の集中力やこだわりを持つことが多い。日本ではそれが「変わっている」とマイナスに評価されがちだが、海外では「個性」として認められることもある。海外に行けばすべて解決というわけではないが、海外に目を向け自分に合った環境を探すことも一つの選択肢なのかもしれない。
イチローの例から考える
プロ野球選手のイチローは、発達障害の傾向があるのではないかとよく言われる。彼はアメリカに渡って大活躍したが、もし日本でずっとプレーしていたらどうだっただろう。変わり者扱いをされ、能力を発揮できずに終わっていた可能性もある。
海外という「常識が違う世界」に飛び込んだからこそ、イチローの才能は花開いたのではないか。これは私たち一般人にも当てはまる話だと思う。
ASDやADHD、吃音といった発達特性を持つ人にとって、日本社会はときに生きづらさを感じる。常識や空気という見えないルールに縛られることが多い。
しかし、外国人との交流や海外での生活では、そもそも文化が違うという前提がある。そのため、発達特性による「違い」も自然に受け入れてもらいやすいし、日本の常識に縛られる必要もない。
私はもう40代後半なのでこのまま日本で働き続けるだろうが、「もし海外で働いていたら」という想像をすると、少し心が軽くなる。
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