今年も気づけば10月に入り、残すところあと3か月を切った。そしてこの時期になると、毎年恒例の話題が社内で浮上する。そう、「忘年会をどうするか」である。
忘年会というのは、年末の定例イベントのようなものだが、会社員にとっては好きな人と嫌な人が分かれる行事であると思う。
特に、幹事を任された人間は大変だ。多くの会社の場合、幹事は大抵、若手や平社員が押し付けられると思う。
しかもその仕事は業務扱いではない。仕事の合間に準備を進め、日程調整や会場探し、上司への確認などを行わなくてはならない。
そして、幹事も参加費を払って忘年会に参加する。自腹を切って仕事をするようなものであり、好きでもなければどう考えても割に合わない役割である。
今年は隣の部署から話が来た
忘年会の話は隣の部署から来た。
先日、隣の部署の若手社員から私宛に電話があった。
「金太郎さんの部署、忘年会の日程は決まりましたか?」
なぜ私に?と思ったが、私は筆頭グループの平社員ということもあり、連絡しやすかったのだろう。
だが私はすぐに「まだ話もないし、分からない」と答えた。
この「分からない」という返答には理由がある。中途半端に「確認してみます」と答えてしまうと、上司への確認が必要になり、その時点で幹事候補にされる可能性が高い。これは長年の経験から身に付けた防衛反応のようなものだ。
案の定、私が逃げたことで、最終的に別の若手が幹事を担当することになった。少し申し訳ない気持ちはあったが、その若手は比較的飲み会好きなタイプなので、多少は救いがあると思う。
幹事は大変そうである
私はまだ平社員の立場であるため、部署内での忘年会調整の様子は嫌でも耳に入ってくる。話を聞いているだけでも、幹事の苦労がよく分かる。
役員や上司からはさまざまな注文が飛んでくるらしい。
「場所は○○市内にしろ」「隣の部署と合同でやれ」「常務は他部署にも顔を出すから、移動しやすいお店にしろ」「日付は常務の都合を最優先しろ」など、聞いているだけでうんざりするような要求ばかりである。
幹事に多少の裁量があればまだ救われるのだが、ここまで指示が多いと完全に「業務」である。しかも残業代は出ない。
忘年会とは本来、部員の1年間の労をねぎらうための集まりではないのだろうか。
しかし現実は上司や役員のために行っているようなものであり、誰のための忘年会なのか、もはや分からない。
私はこのような現実を見ているので、極力首を突っ込まないようにしている。非協力的と思われても構わない。少しでも関わると、気づけば幹事に巻き込まれている可能性があるからだ。
幸い、私は「飲み会が苦手な人間」として社内に定着しているので、今のところその巻き込まれるリスクは低いと考えている。とはいえ油断は禁物である。
そして参加の可否の案内がきた
先日、ついに忘年会の参加可否の案内が回ってきた。開催は12月中旬の金曜日らしい。まだ2か月以上先の話だが、人数が多くなるのでお店の予約も早めにしなければならないのだろう。
回答期限は1週間。私は正直、職場の大勢での飲み会は苦手である。形式的な乾杯、上司への気遣い、場の空気を読んだ会話。どれも得意ではない。
そして参加費も決して安くない。また過去を振り返っても、職場の大人数の飲み会での良い思い出はほとんどない。
それでも、幹事の若手が苦労して準備していることを思うと、安易に「不参加」と書くのも気が引ける。とはいえ、行きたくもない飲み会に無理して参加するのもお金と時間がもったいない。
この時期の悩みどころはここにある。「予定がある」と言って不参加にするにしても、2か月も前からの予定となると理由を聞かれたときに苦しい。
かといって参加に丸を付けておき、当日になってドタキャンすれば、事前徴収の会費が無駄になる。
あとは「参加したくない」と正直に伝えることであるが、少々角が立つ可能性がある。
忘年会のあり方を考える
そもそも大人数でやる忘年会という行事自体、今の時代に本当に必要なのだろうかと思う。
コロナ禍を経てリモート飲み会が流行した時期もあったが、最近は再び「やっぱりリアルで集まろう」という声が強まっている。しかし、それは本当に全員が望んでいることなのだろうか。
私の感覚では、会社の忘年会は上司や年配社員の自己満足という側面が強いと思う。
もしそれほどまでにやりたいのなら、幹事は上司や係長以上の役職の人が引き受ければ良いと思う。その方が無茶な要求も出ず、社内の調整もスムーズに進むだろう。
毎回若手に押し付けるのは不公平であるし、若手が離職していく一因にもなっているのではないかとすら思う。
忘年会の目的が「部員の労をねぎらう」ことであるなら、もっと小規模でもいいと思う。グループ単位や係単位など、普段から顔を合わせているメンバーなら話題にも困らない。
大人数での飲み会は、同じ部署と言えど普段関わらない人が多く、話題にも困ることが多い。
毎年やってくる職場の忘年会。今年もまた、その波が静かに近づいている。飲み会が好きな人にとっては楽しいイベントかもしれないが、私のようにコミュ障の人間にとっては、嫌な行事の一つである。
会社の忘年会が完全に無くなることはないだろうが、せめて忘年会が「強制的な義務」ではなく、本当に「一年をねぎらう場」になることを願うばかりである。


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