私の吃音対策 ~職場で実践している工夫と心構え

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発達グレーと向き合う
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私はこれまで度々、吃音について記事を書いてきた。吃音は人によって症状も程度も異なるが、私自身の体験を整理することで、同じような悩みを抱える人の参考になるかもしれないと思っている。今回は改めて、私が日常生活や職場で取っている吃音対策をまとめてみた。

よく言われることと、その反応

吃音が出たとき、周囲からよく言われる言葉に「落ち着け」「焦るな」というものがある。確かに焦っているように見えるのかもしれない。しかし実際には、自分では焦っていないことも多い。それでも「焦るな」と言われると、むしろ意識してしまい余計に焦る結果になる。

また「ゆっくり話せば大丈夫」「落ち着いて話せば直る」といったアドバイスも何度も受けてきた。しかし、いくら心がけてもどもるときはどもる。言われ続けることで「またかぁ」という気持ちが強くなり、アドバイスされること自体に嫌気がさすこともある。

特に「連発」と呼ばれる吃音は、相手からすれば「慌てているように見える」のだろう。急に話しかけられたり突然の電話では、頭の切り替えがうまくできないためか、準備が整わずに吃音が出やすいのは事実である。

私なりに取っている吃音対策

突然話しかけられたとき

私はASDの傾向もあるため、作業中に急に話しかけられることが非常にストレスになる。作業を止められること自体が負担であり、再び作業に戻る切り替えにも時間を要する。そうした状況で急に返答を求められると、吃音が出やすい。

そこで私は、突然話しかけられたときに「少し待てますか?」と伝えるようにしている。あるいは「今作業中なので、落ち着いたらこちらから話す」と先に言ってしまう。自分のタイミングで話せるようにすれば、気持ちの準備ができ、吃音が出ても言い換えや修正がしやすくなる。

電話への対応

業務用の携帯電話には、基本的にすぐには出ない。相手が誰かを確認したうえで、落ち着いてからかけ直すようにしている。突然の会話を避けるという点では、先ほどの対策と同じである。気持ちを落ち着かせ準備することで心構えができ、吃音が出ても対応しやすい。

しかし、固定電話は厄介である。自分宛てに鳴った場合、出ざるを得ないことが多い。個人名など言い換えできない言葉でどもったときは、沈黙を受け入れ、場合によっては謝るなどし、腹をくくるしかない。
そして、私は電話を切る前に「急ぎでなければメールで連絡をいただきたい。メールの方が聞き間違いや失念も防げる」と添えるようにしている。
電話の相手の多くは業務上の付き合い程度の関係なので「吃音のため」とはあえて言わないようにしている。あまり人に言いたいことではないので、吃音の事は直属の上司、同じチームのメンバーくらいにしか伝えてない。

また、他人の電話が鳴ったときには、一呼吸置いてから出るようにしている。大抵はその間に別の人が取ってくれる。
そのために「電話を取らない人」と思われている可能性もある。評価が下がることは承知のうえだが、吃音による緊張を考えると、どうしてもそうした行動を取ってしまう。これはあまりお勧めできる方法ではないが、現実的にはそうしてやり過ごしている。

メールでのやり取り

急ぎでない用件はできる限りメールで済ませるようにしている。大半の人はメールで返信してくれるため、電話で対応する必要がなくなる。吃音が生じる場面を減らすことで、余計な心配も減らすことができる。

周囲からの印象と私の気持ち

これらの対策を取っていることで、私は「話しかけにくい人」と思われていると感じる。また、吃音が出たときには「何を言っているのか分からない人」と思われているのではないかと不安になる。

吃音を根本的に治す方法は現在ないとされている。そのため、周囲の印象や評価が下がることを前提に、自分なりの対策を取るしかない。

中には「気にするな」「どもっても周囲は気にしていない」と言う人もいる。しかし実際に吃音が出ると、当事者としては恥ずかしさやバツの悪さを強く感じる。吃音を知らない人からすれば「落ち着きがない」「何か隠し事をしている」と誤解されることもあるだろう。

さらに、私の話し方を真似して笑う人もいた。これは非常に嫌な経験であり、バカにされたような思いがした。
また、「これは評価されないと悟った瞬間」でも記載したが、この上司に面談で「うまく話せず、最近人と話すことが億劫だ」と伝えたことがある。そうしたら「話すことが億劫というのは問題だ」と逆にいろいろ言われ、かえって評価が下がったのだろうと思ったことがある。おそらく、「普通に話すことすらもできないのか」と思われていたのだと思う。

このようなことは吃音当事者でなければ理解しにくい苦しみだと思う。
だからこそ、周囲からの印象が悪くなろうとも、前述のような対策を続けてしまうのである。

まとめ

吃音は一見すると「努力すれば克服できる」と思われがちだが、実際には本人の意思だけではどうにもならないことが多い。私の場合、電話や突然の会話を避ける、準備の時間を確保する、メールを活用するなど、自分なりの工夫を積み重ねることで、なんとか仕事を回している。

対策の中には褒められた行為とは言い難いものもあるので、周囲からの評価が下がることも重々承知している。しかし、吃音を抱えて働く以上、自分の心身を守ることを優先せざるを得ない。どもることにより、人前で恥はかきたくないものである。

おそらくこれらの悩みは、吃音の当事者でなければ分からない苦労だと思う。

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